オリオンの砂時計
して、それが不倫から始まったものでその相手と何年もこんな風にお酒呑むようになってる姿を見たらなんて言うかな…ごめんね、昔の私。でもさ、結婚なんてしなくてもいいけど恋愛くらい、あんたもしときなね。

もうすぐX'masがきて、去年みたいに過ごすのかな。過ごせるのかな…。

独りで呑むシャンパンは、きっと美味しくないから。


★嘘カラ本当へ。★


暖房の効いた喫茶店で。
時折指を絡ませながらケーキを食べて。

見つめ合い。
沈黙が歯がゆい。

いつもは冷え性の冷たい指先が汗ばんでいるのは、効きすぎた空調のせいにして。

会計済ませて外に出ると、辺りは暗闇。

途端に冷たい空気に包まれ、心の隙間に風、すり抜けた。


握手?
抱擁?


ちがう。
足りない。







駅の改札で手を振って別れ、店に向かって足早に歩き出す。


ケーキを食べて化粧室で直したメイク。

横断歩道で立ち止まり手鏡で再び直す。

信号の赤ほどには潔くない色のグロスを唇にのせる。

あの人は自分の唇についたグロスを、もう指で拭き取っただろう。


青になるのが待ちきれず、小走りで道を渡る。

理由なんて、考えるだけ面倒。

今夜もまた、自分を見失う旅にでる。


★接吻。★


キスで、相手との身体の相性がわかる。

運転の仕方で、その人のベッドの上の動きが見える。



嘘……???

そんなコトない。

よく見てごらん。

よく感じてごらん。

目をそらさないで。

わざと鈍感なフリなんてしないで。



あなたの目は、節穴じゃない、ちゃんと見えてるんでしょ……?
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