ビター・キャラメル
「だ か ら!
あたしは携帯持ってないんです!」
何度目だろうかこの会話。
あたしは隣にあった2枚のふきんのうち1枚を彼に投げつけて、もう1枚で床を拭き始める。
あーもう、やんなっちゃう。
顔は癒しなのに、イケメンなだけあって中身はただのチャラ男っていうのが残念すぎる。
「その嘘いい加減やめない?携帯くらいいいじゃん」
彼はあたしが投げたふきんをぽんぽん投げて遊んでいる。
汚いふきんを投げてやればよかった。
「ほんとに持ってないんだってば!あたしだって欲しいのよ!てかさっさと手伝ってよっ」
ついカッとなって『お客サマ』にタメ口になる。
貧乏な我が家に携帯買って毎月支払い、なんてそんなお金はない。
そりゃ欲しいのはやまやまだけど、日々の生活で精一杯。ムリ。