重力地獄の決闘
「キム!浮上バーニアに右の動力を回せ!一気にいくぞ」

「了解、動力切り替え完了、いつでもどうぞ」

「いっけぇー」

 マックは手動状態にあるエンジンのパワースロットルレバーを思いっきり引いた。

 4つある補助動力ジェネレーターのパワーゲージが一気にレッドゾーンまで上がる。

 主慣性制御フィールドが停止しているため、自分の体重を支え切れず急速に降下していたジャッカルの船体から、緊急上昇用の浮上バーニアのプラズマ噴流が長々と吐き出された。

 高度計が1千メートルを切った。

 予備慣性制御フィールドではカバー出来ないGが、マックをシートに押し付ける。

「出力が上がりません、地上まで12秒!」

「くっ!これまでか!」

 マックはトロンⅡBの凶悪な重力の齶を呪いながら、フロント越しに急速に近付く銀色の大地を見やった。
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