恋に落ちた彼と彼女の話
夕焼け空の下

後ろから抱きしめると、彼女は幸せそうに笑った。

その顔が嬉しくて、思わず頬が緩みそうになった。

でもそれを悟られたくなくて、肩口に顔を埋めると、彼女はくすくす笑いながら
くすぐったいよ、と言った。

甘い匂いがする。
ついさっきまでケーキでも焼いていたのか、甘味を好む彼女の体臭なのかはわからない。

そのまま顔を上げて彼女の薄い唇に自分のそれを押しつけると
彼女は驚いたような顔をして、ふい、と横を向いた。

その耳の端が朱かったのは
夕焼けのせいか、それとも。

end.


→あなたと出会った日

< 2 / 13 >

この作品をシェア

pagetop