SWEET×HOME
「さあ、レッツゴー!」
お母さんは車に乗るなり気持ち悪いくらいに高い声で陽気に手を上げた。
お母さんは運転席、あたしは後部座席だからここからお母さんの顔は見ることができない。
でもきっと、昨日のような悪魔の笑みを浮かべているにちがいない。
「眠いんだったら寝てていいわよ。
結構な時間かかるから」
お母さんはそう言って車のアクセルを踏んだ。
あれ、なんか違うんじゃないかな?
あたしが聞いた話は確か[そんなに遠い場所じゃないから]じゃなかったかな?
そうだった。
騙されたじゃないか。
だからあの悪魔の笑みか…
いつものあたしならもっと驚いているはずだけど、一人暮らしをするということがあたしの中で一番驚くことだったから、今更ちょっと嘘をつかれたくらいじゃ驚かないみたいだ。