新世界創造記 ~勇敢なる姫の使命
「私たちを騙そうとしても無理よ。」
レリンが微笑みながら言う。
さっきの仏頂面が嘘のようだ。
レリンは、ゆっくり、笑いを消さずに、クリスから離れた。
レリンとクリスの間にディースが静かに入る。
ディースはクリスを睨み付けながら腰の剣を抜く。
剣を構えるディースの顔は無表情。見る者によっては、相手を震え上がらせてしまう程の迫力だ。
クリスはそんなディースを見て、おもしろそうに笑った。
「さすがだね…あたし、変装にはすっっごく自信あるのに。」
レリンがクリスにばけている少女に負けないくらいのおもしろそうな笑みを浮かべた。
「あんたの変装下手なのよ。そんなんでよく今までやってこれたわね~。
「あ~ぁ…今までのやつはころッと騙されてくれたのに…あんたみたいなまぬけ顔に見抜かれるなんてあたしもまだまだ修行が足りないわね…」
「……女って怖い」
ディースが2人に聞こえないように呟く。
「あんたみたいな弱いやつに騙されるようなら私もディースもやっていけないわよ。あんたどうせ殺し屋なんでしょ?」
「………」
レリンは口が達者な方。
クリスは黙ったままレリンを睨み付ける。
「いったい誰に頼まれたの??」
「…おまえなんかに言う訳ない」
「いいから言いなさい!!」
急にレリンが怒鳴りつけた。
レリンの顔を見て殺し屋が凍り付く…
なんて迫力なの…??ただの姫ではなさそう……
……おもしろい。
私の変装を見破るやつなんて、数える程しかいないのに……
それを一国の姫が…城で一輪の花のように、美しく儚くてはいけないのに…
クリス(に化けてる奴)は微笑した。
「姫様。また今度会えるといいわね!!」
大袈裟に投げキスを残して走り去った。