Paradise Jack
そんな想いの中、桐生怜"を演じるためには、まず"彼女"をつくりあげなければいけない。
怜の性格、行動、そんなものを組み立てたら、あとは演じて馴染ませる。
自分で言うのもなんだけれど、これでも世界という舞台に立った役者だ。人目を引く外見をしているのは理解しているし、それを利用したことだってある。
さすがに桜海町のような小さな町を練り歩き、変な噂が立つのは面倒だった。ここならば、その心配はない。
映画や雑誌、テレビなんかで注目されるような人間が沢山いる。
"演技の練習"をするにはぴったりな場所だ。
「怜よ」
「怜ちゃんね。どう?今度うちの雑誌に…」
「ごめんなさい。今はそういうの考えてない」
「ええ、嘘だ。じゃあ、なんでこの場所でひとり、空のグラスを持っていたのさ」
細められた瞳に、好色が宿る。
そっと伸ばされた手が、遠慮なく腰にふれて思わず体が強張った。
ハッとして視線だけで店内を見渡せば、時折見かける飲み干したグラスを、離しもせず手に持つ女達。
そのうちのひとりに、カクテルを持った男が近寄っていくのが見えた。