Natural
どれだけの時間泣いたかわからないが、美紗子の目は腫れてしまいとても人前に行けるような状態ではなかった。

だが、4人に会いたい・・

そう思い参列は出来ないが4つの会場に足を運ぶことに決めた。

シャワーを浴びたかったが、今の美紗子の体には毅が姫が、竜次がもっくんが昨日触れたところがたくさんある。

洗い流したくはなかった。

シャワーも浴びることが出来ず、美紗子はそのまま喪服に着替えた。

その後、部屋にある写真たちをずっと眺めた。

5人並んだ写真を見て手に取ったまま目を閉じた。

その写真は毅の家で撮ったものでその時の情景が目に浮かんできた。

最後の1本のビールをみんなでジャンケンして取り合ったこと。

勝ったのが竜次だったのに姫が奪ったこと。

姫と一緒におつまみのスルメイカを焼いたこと。

ワインをもっくんが一気飲みた後その5分後に寝てしまったこと。

毅が片付けを手伝ってくれたこと。

その日、手を繋いで寝たこと。

普通なら思い出し笑いなどするのに、美紗子は衝動的に洗面台のところに置いてあるカミソリで手首を切った。

血が流れ出すのを見て、4人がそれ以上するなと止めている情景が浮かんだ。

痛いからそれが見えるのではなく、4人なら絶対止める。

そう思い美紗子は手首を押さえ、消毒薬をつけて絆創膏を貼った。

”みんなのところに行きたいのに・・わたしは1人でどうすればいいの??”

そのまままた泣き崩れ、通夜の時間になっても美紗子は動けなかった。

誰も助けてなんてくれない。

美紗子は人生で最大の孤独を感じた。
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