Black loves 〜最強総長の彼女〜
幻想


お互い体はボロボロ

上の空で昔の出来事を思い出してても

頭の中は霞んでても

拳だけははっきり動く。

丁寧に的を狙う。

春斗の右頬にストレートに決まるパンチはどこか汚い。

俺は、最低なんだ。

こんなときにあの頃のことは思い出したくなかった。

それでもよろけた春斗の隙をついて

左頬をもう一発殴った。

バンッなんて迫力のある音はしない。

ドラマじゃないんだ。

リアルだから

そんな綺麗には決まらない。

造りものじゃないからあとに残るのは、悪者をやっつけた達成感じゃない。

仲間をここまでにした

険悪感。

ただそれだけだ。

仕方ないこと。

俺は暴走族だから。

ヤクザ直属の暴走族の

組織の一員になったから。













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