光の子

濁流



しんと冷える十一月の夜中に、ガラスが割れる音が、かすかに聞こえた。

矢楚はすぐに飛び起き部屋を出た。


階段を駆け下りると、リビングでつっぷすように倒れた母の背に、馬乗りになる父の姿が見えた。


「親父!!」      

やめろよ!と矢楚が駆け寄るまでに、父は母の後ろ髪を鷲掴みして、床に三度、顔を叩きつけた。


矢楚は父親の背中をつかみ、母から引き剥がそうとした。
父の手に母の長い髪が掴まり、母は首が折れそうなほどに引っ張られ、血まみれの顔がさらに歪む。


階段から駆け下りた二人の姉が、お母さん!と悲痛な叫び声を上げた。



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