光の子


震え上がる姉たちに、矢楚は叫んだ。


「姉ぇちゃん、ふとん!」

その声に弾かれたように、姉の一人が二階に駆け上がった。

父は矢楚を突き飛ばし、酒臭い息を荒々しく吐き散らしながら、執拗に母を殴った。

矢楚は何度も、母の前に立ち、庇って父に蹴られ、殴られた。


そうする間に戻った姉が、毛布を矢楚に投げて寄越した。

矢楚は、暴れる父の頭から毛布を被せると、その上に乗って押さえ込んだ。


「母さん連れて!部屋に鍵かけて!!」      

姉たちが、母を二階の部屋に連れて行くと同時に、父がうなり声をあげて、矢楚を自分の上から振り落とした。



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