光の子

冬の足音






… … … … … …


広場に、冷たい秋の風が強く吹き抜けていく。


肩と肩をぴったりと寄せて、矢楚と広香は、陽だまりのベンチに座っている。


こうして広香といると、
まるでこの広場が、大きな揺りかごのように安らいでいる。



見上げれば鮮やかな葉の紅色。
紅葉は、煌びやかで豊かで、美しい。


燃えるように色付く木々が、他に行く場所のない二人を力づけるように立たずんでいる。



広香の透き通った声が、すぐ近くで心地よく響いた。



「来週の今ごろは、沖縄で海を見てるのかな」



修学旅行が、来週に控えていた。二年・三年生合同で行われる。

三年生が修学旅行に行くのは、矢楚たちの学年で最後だ。

移行期にあたり、人数が倍であることから、

例年訪れていた京都・奈良には二年生が三泊四日で。
三年生は二泊三日で沖縄に行くことになった。


わずか二泊といえ、酒乱の父を女ばかりの家に置いていく思うと、矢楚の憂いは深い。


< 129 / 524 >

この作品をシェア

pagetop