光の子
「私、飛行機はじめて……矢楚は、たくさん乗ったことありそう。
外国も、行ったんだよね」
クリームがかったブルーのマフラーに、広香はあごをうずめて話す。
寒さのせいか耳たぶがサクラ色に染まって、その美しさに矢楚は見惚(みと)れた。
「海外は、サッカーがらみだけどね。アルゼンチンと、ブラジルに」
矢楚はふたつの手のひらで、広香の華奢な両手を包んでいた。
矢楚の体温が、広香に移っていく。
「南米まで行ったんだ……。どんなとこだった?」
「俺は、サッカーしてただけだから、その印象に限るけど。
貧しい人がいっぱいいる国だったよ。
スラムの貧しい子たちが、成功を夢見て、サッカーを死に物狂いでやってた」