光の子
まだ朝の八時を過ぎたばかり。
図書室の出入口には銀のポールが立てられ、プラスチックのチェーンがかかっていた。
『閉室しました』
そう書かれた受け付けの札を横目に、
広香は、チェーンをまたいで薄暗い図書室に入った。
ぐるり書架に囲まれたソファーに、身を沈めるように矢楚が座っている。
広香の足音にも気付かず、強く目を閉じてソファーの背に首をもたせ、
少し天井を仰ぐような姿勢で、まんじりとも動かない。
広香は、真正面に立つと、柔らかく穏やかに響くよう気を付けながら、
矢楚、と小さく呼んだ。