光の子
そうして、矢楚のすぐ前まで来ると、柴本亜希は微笑んだ。
口の端をきゅっと上げ、目元をゆるませたぐらいの薄い笑みだったが、はっとさせる艶(あで)やかさがあった。
「私は、藤川サンでも、藤川くんでも、どっちでもいいんだ-」
一瞬、それは異国の言葉のように、聞こえはしたものの、矢楚の頭の中で意味を成さなかった。
柴本亜希は、ぼんやりした矢楚にもう一度言った。
「藤川くんが、私と付き合ってくれるなら。
お父さんと。藤川サンと、もう会わないよ」
なに、言ってる?
矢楚は混乱した。
「鷹高に入ったら。私を彼女にして。
サッカーの邪魔はしないし。土日のデートもいらない。
学校にいる間だけ、藤川くんを独り占めさせてくれたら、それでいいから」