光の子
「なんだか、無力だね」
ぽろりと一つ、
広香からこぼれた言葉が、床に落ちて三人を見つめた。
「私たち、矢楚のこと、何にも知らないんだね。
何かを知ったとして。
結局は、何にもできないんだろうね」
矢楚の苦悩の一端を知って、いてもたってもいられずに、こうして三人顔を合わせて話しても。
途方に暮れる、無力な自分たちを見つけただけだ。
「私たちはね」
声に広香が顔を上げると、木綿子の優しい眼差しが待っていた。
夏の太陽を受けて輝くオレンジみたいな、その微笑み。
「私と知也はね、そう、きっと無力なんだと思う。
でも、広香なら。
矢楚のために、できることがあると思うよ」