光の子

滅光






警察からの電話を切ると、すぐさま受話器を持ち上げ、矢楚は沙与の携帯番号を押した。

しかし、途中で受話器を置く。


時計を見た。朝の八時だ。

今日は土曜で、沙与は母のところに泊まっている。


電話の内容が母の耳にすぐさま入るのはまずい。


沙与が落ち着いてから、母にうまく伝えてもらうようにしなければ。


電話台に両手を突き、目を閉じる。



夢の中にいるみたいだ。
靄がかかってすべての感覚が鈍い。


オレはなぜ驚かなかったんだ。
どっかで覚悟していた……、まさか。




集中しろ。


美鈴が起きる前に沙与と打合せる必要があった。

美鈴が知れば間違いなく取り乱すからだ。


曇った十月の朝は肌寒く、美鈴が布団から出てくるまでにはまだ時間がある。



矢楚は考えをまとめると、受話器をとって沙与の携帯をコールした。






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