光の子



「やすい給料でこき使われてるんだから、このぐらいもらって当然よ。

女流陶芸家が、そんな野暮ったい姿で受賞式に現れるんじゃあ、

これから陶芸家目指す女の子に、申し訳ないわよ。
夢を与えなきゃ。

それに。広香は美貌を台無しにしてる」




高校を卒業して、六年が経った。


広香は進学はせず、現代の名工と称される陶芸家に弟子入りし、陶工となった。


広香の師匠は、
国の重要無形文化財保持者に認定された、俗に人間国宝と称される偉大な名工の直弟子だった。


いわば広香は、人間国宝の孫弟子となったわけだが、
師匠の元で見習いのような立場で働いた最初の三年は、
手取りが十万にも満たず、広香の生活は清貧を極めた。


一通りの仕事を覚えた四年目から、

広香は仕事後の工房を師より借用し、自分の作品を作るようになった。


そうしてできた魚文絵皿を県の陶芸展に出品し、

二度目の挑戦にあたる本年、新人賞を受賞した。


それは史上最年少、女性初の受賞として、受賞式には地元紙の取材もくることになっていた。




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