光の子
うん。
広香が微笑んで、明日は、私が朝ごはん作る番ね、と言うと、矢楚はすぐに釘をさした。
「凝ったやつはダメだよ。お金のかからない、こういう手軽なのにして」
「お互い余裕のない家なんだから、でしょ、うん、分かってる。ね、矢楚、お昼ご飯は?」
「ああ、今日はね、」
矢楚はスポーツバッグを広げて見せる。
おにぎりであろうハンカチ包みとゼリー飲料、バナナが見えた。
矢楚の母親は、二年ほど前から働きに出ている。
プロサッカー選手だった矢楚の父は、二年前に引退し、企業へ再就職したものの、収入が激減した。
二人の姉は高校生でお金がかかる時期。
矢楚の通うサッカークラブも安くはない。
薬剤師の資格を持っていた母親が再就職し、いまや家計を担っているのだという。
矢楚は、少しでも母の負担を減らそうと、クラブに持っていく弁当は、自分で用意しているのだ。