光の子
広香の手をとり、矢楚はベンチへ連れていく。
座るとすぐ、緋色のスポーツバッグをさぐり、鮮やかな黄緑色した水筒を出した
矢楚の身につけるもの、持つものは、鮮やかな色が多い。
「飲む?」
「あとにするね、ありがとう」
広香は、水を飲む矢楚を見つめた。
太くなってきた首。上半身は、しなやかな筋肉に覆われ、脚は鍛え上げられ逞しい。
十年近い歳月をかけて、プロのサッカー選手になるべく整えた、精神と肉体。
夢のフィールドへ、あと三年もすれば飛び出していく人。
「はい、食べてみて」
矢楚がハンカチの包みをほどいて、おにぎりを渡してくれた。
「あ、三角が上手に握れてる」
「進歩めざましい?」