Door
電話は10回位コールをしたら、出た。


「もしもし。」

若干震えている声だけど、
もう逃げないように自分に言い聞かせて。

『愛子?大丈夫か?』

海斗はただ私を心配して
何も聞かないで話しかけてくるから
余計に胸が痛かった。

「…うん、大丈夫。
ずっと話せなくて、ゴメン。」

泣きそうになりそうな声をおさえて
もう一言付け加えた。

「ねぇ、今どこにいるの?」

『ああ、家にいるよ。』

あたたかくて、優しい声。
本当はずっと前から聞きたかった、声。


「あのさ、今から家に、来れないかな?
話、したいんだ。」

一語一語、ゆっくり、伝わるように。
私は話した。

海斗はえ?って驚いたような声を出したけど
『すぐに行く』って言うとすぐに電話を切った。
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