風に揺蕩う物語
それも悪くはない。シャロンは、僕を心配してくれる数少ない一人だ。

僕は都合よく愛情だと思っている。そう思うと僕もシャロンを大切にしたいという気持ちになるし。

こうして僕は日々を生きている。

シャオシール家を守るために。




「おかえりなさいませリオナス様っ」

ある日の夜、玄関の方からシャロンの嬉々した声音が僕の書斎まで聞こえてきた。どうやらリオナスが屋敷に帰ってきたようだ。

帰ってくるとは連絡を受けていなかったが…。

「どうしましょう…夕食の品が足りないかも」

僕は二階にある自室を出て、玄関の踊り廊下に顔を出すと、困ったようにそう話すエプロン姿のシャロンと、王族騎士の軍服に身を包んでいるリオナスの姿があった。

短く切りそろえてある赤みを帯びた金髪に、肩当てや胸当てをしていても分るほどのしっかりとした体躯をしているリオナスは、どう見ても軍人に見える体躯をしている。

痩せ型のヒューゴとは真逆の体躯と言える。

「急に帰ってきてすまないシャロン。帰る予定ではなかったのだが、セレスティア様から所用を頼まれてな。ついでに休息を下さったので、こうして帰ってくる運びとなった」

リオナスは腰に携えていた剣をシャロンに手渡すと、身に着けている防具を外し出した。そして何気なく視線を上げ、二階の踊り場に居るヒューゴに視線を送る。

「久しぶりだねリオナス。二か月ぶりぐらいかな?」

「お久しぶりです兄上」

笑顔で迎え入れたヒューゴと、厳しい表情を崩さないリオナス。そんな二人を複雑な表情で見守るシャロン。

「久しぶりの家族水入らずのお食事が出来ますね。私も腕によりをかけてお食事をお作りします」

シャロンは家族という言葉を強調しながらそう話す。
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