風に揺蕩う物語
「俺の食事はいいよシャロン。着替えたらすぐに出かけないといけないんだ。その時ついでに外で食事をとってくる」

「そう…ですか」

リオナスはそう言いながら防具を外すとそれをシャロンに手渡した。そして手に持っていた書簡をヒューゴに手渡す。

「セレスティア様から書簡を預かりました。今日中に読んで欲しいとの事です」

「姫様から書簡?僕に??」

「はい…それでは俺は急ぐので着替えてきます」

会話もそこそこにそう言うとリオナスは、二階にある自分の自室に戻ってしまった。ヒューゴが手渡された書簡をじっくりと眺めながら不思議そうな顔をしている。

「確かに王族の焼印がされている。セレスティア様からの書簡…」

王族から書簡が届くなんて事は滅多にある事ではない。それもエストール王国の第一王女であるセレスティア直々に認めた書簡。

ヒューゴはその書簡を少し眺めた後、シャロンに視線を送る。シャロンはと言うと少し心配そうな表情でヒューゴを眺めていた。

ヒューゴは一度、自分の書斎に戻り、王族の焼印の丸筒の中から便箋を取り出し、文章に目を通しだした。

そしてそれを読み終えるとヒューゴは、ふと表情を和らげると、その便箋を丁寧に丸筒に戻し、書斎の引出しにしまった。

次の日ヒューゴは、朝早くから珍しく忙しい時間を過ごしていた。

「シャロン…疲れた」

「我慢してくださいヒューゴ様。これから王女様に謁見なされるのですから、それなりの準備が必要なのです」

久しく王宮に赴く事がなかったヒューゴは、貴族とは程遠いい庶民の様な服装で生活をしていた。それに身だしなみも肩に届きそうなほど髪の毛が伸びており、医者としてのヒューゴならありだが、軍人としては少し頂けない感じだった。

シャロンはバッサリと髪を切る事を勧めたのだが、それは少し抵抗があると言うヒューゴの為に、シャロンがヒューゴの髪の毛を艶がよく出るように丁寧にくし削っている。

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