風に揺蕩う物語
「お帰りなさいませヒューゴ様。今日も槍のお手入れに行っておられたのですか?」

「ただいま。まぁ…ね。ちょっと新しい穂先を新調したくて色々と話し込んでたんだよ」

ヒューゴは明らかに勘繰られていると知りながらもシラを切る。そんなヒューゴを明らかに不審に思っているシャロンだが、深くは問いたださない。

そうですかと返事を返すと、そのまま台所に足を運んでしまう。

気まずい雰囲気を感じながらもヒューゴは一度自室に戻り、鍛錬で汚れた服装を変えていると、屋敷に来客が来た。

シャロンが対応しているようだが、少し揉めている様な声がヒューゴの自室まで届き、ヒューゴは自室から出て玄関の踊り場に足を向ける。

すると姿勢正しく冷静に居ながらも、はっきりとした声音で来客者と対峙するシャロンの姿があった。

「事前に連絡して頂かないとヒューゴ様とお会いするのは無理でございます。また改めて書面での約束をお願いします」

「ちょっと話がしただけなんですが…いま私を帰したらきっと後悔する事になりますよ」

来客者の変な言い回しにシャロンは、明らかな不信感を抱いている様子だ。

来客者は結構若い顔立ちをしている蜂蜜色の髪色をしている男だった。明らかに卸し立てと分かる服を着ており、普段から来ている服装ではないのがヒューゴにも分かった。

おそらくその事はシャロンも気付いていた。なので警戒して対応しているのだろう。シャロンは頑として来客者を追い返そうとしていた。

「脅迫とも取れる言い回しをするのですね。そうなってくると私もそれなりの対応を取らざる負えませんが…よろしいですか?」

怖い事を言い出したシャロンを余所に、来客者は少し後ずさりながらも困った様子だ。

「ひとまずこの場は、帰るしかなさそうですね。私も無理をしてまで伝える義理もないですし…」
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