「ワタリガラス」
「あ。鳥さんだ。」
「・・・。」
「鳥さんだぁ!」
「・・・。」
一人の少女が寄ってきました。
珍しい鳥、というよりも、ワタリガラス自体が駆逐(くちく)されてしまっていたのでやはり珍しかったのでしょう、彼女は屈託のない笑顔をぶら下げていました。
ワタリガラスは、今更自分に興味を持つ人間なんて、と。
「キミはなんていう鳥なの?」
「・・・。」
「キミは・・・。」
「うるさい。」
「え・・・。」
「話しかけないで。」
「・・・。」
少女は悲しそうな顔をしました。
ワタリガラスはその顔を見て、少しだけ悲しくなりましたが、これも彼女のためです。自分は、不幸を呼び寄せる鳥だから。
だから、誰とも仲良くしてはいけない。それは、確かな事だと思っていたのですから。