駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「間島に何か用か?」

「いえ。 少し散歩しようと出歩いていましたら、偶然お見かけ致しました故」

「ならばもう行け。 五番隊は、巡察の時間であろう」

「はい」



やはり隊長である。

人懐っこい笑みを浮かべていた熊木も、斎藤を前にして体制を整え身構えていた。

緊張した面持ちの熊木に指示を下すと、熊木は頭を下げて走り去って行く。



「熊木さん、巡察頑張って下さいねぇ!!」


走り去る背に手を振り、振り返って軽くお辞儀をした熊木を見送った。


姿が見えなくなると、くるりと身体を反転させ、無表情で見下ろしてくる斎藤を見上げニコッと微笑む。


「斎藤さん、どうもありがとうございました!」

「……男をつき通したくば、もう少し慎重に事を進めることだな」

「あはは、何を言っているのかよく分からなくって。 そこで質問なんですけど、武田さんって危険なんですか?」



斎藤がこの場に現れたのは偶然ではなく、近くを通りかかった際に気配に気付き、矢央の僅かに焦りを見せる表情に気付いた斎藤は、わざと二人に近付いていた。

それに矢央も気付き、助かったと斎藤に駆け寄ったのだ。


斎藤の機転のおかげで、墓穴を掘らずにすみホッと胸を撫で下ろした。


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