駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

夕方の心地好い風が髪を撫でる。


夕日に照らされた藤堂を見ていると切なくて堪らない。



「もうねずっと前からなんだよ。 新撰組にいる意味が分からなくなったのは」


山南がいなくなったあの日、藤堂は一人泣き崩れた。

男のくせに情けないと思われても構わないほど、涙が枯れて一生分を流してしまったんじゃないかと思う程に泣いたあの日。


ぽっかりと心に穴が開いて、それから少しずつ広がっていき塞がることはないままこれまで来てしまった。



「信じてたものが分からなくなって、大切なものがなくなって、僕は僕を保てなくなった」


がむしゃらに走ってきたんだ。

仲間を信じて仲間のために、ただひたすらに。


なのにあの日、頑なに信じて疑わなかった仲間への信頼は音を立て崩れていった。


「どうして山南さんが死ななきゃならなかったのか。 新撰組の立場も役割も分かってるけど、でもっ新撰組ができる前からの仲間を、ああも簡単に失っていいはずないだろ!」


藤堂の肩が小刻みに揺れていた。

ーーー彼はまだ過去を拭えてなかったのか。


既に前を向いているとばかり思っていた。

皆大丈夫だと。 自分だけが取り残され、色々抱え逃げて、そして立ち直ったのだと思っていた。


けれど違ったんだと、この時ようやく分かった。

今頃彼の本心に気付いても、もう遅いのだろうか。



「平助さん…」

「もう疲れたんだ。 新撰組とか仲間とか、そんなものがあるから、こんなに悩むんだって。思ってたより……僕は弱かった」


いつも支えてくれていた藤堂。

屈託のない笑みを浮かべ「矢央ちゃん!」と、いつも変わらず出迎えてくれていた藤堂に、矢央は何をしてやればいいのか分からず歯痒い思いに唇を噛んだ。


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