駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

人の気配を感じたのは、お茶をいれに行くと出て行って暫く経ってからだった。

だから当然のように近藤達と戦っているのだろうと思っていたが、山崎は首を振る。


沖田の真剣な眼差しが山崎を見詰める。


「永倉さん達に危険を知らせるため、油小路へ」

「一人で行かせたのかっ!?」


山崎の肩を掴んだ沖田の口調が珍しく尖っている。


「此方の方が危険と判断したので。 油小路には永倉さん達がいる」

「それは、最初の予定通りにいっていた場合でしょう? 屯所がこんな状況なんだ、油小路はきっと…」


きっと油小路の方が危険だろうと、沖田も山崎も分かっている。

伊東と雑魚相手なら、此方には負傷者や怪我人がいるとしても近藤や土方、山崎や沖田といった手練れがいるから大丈夫だろうが、あちらには熊木がいるかもしれないのだ。

そうなれば確実に永倉達の方が危険だった。

御陵衛士と戦いながら、矢央を守りつつ熊木とも戦うことになるかもしれないんだ。



「山崎さん、貴方の判断は間違っていたかもしれない。 さっさとこちらを片付けますよ」

「御意」


今の沖田からは普段の穏やかな青年の雰囲気は一切なく、そこにいたのは新選組一番隊隊長の顔をした沖田総司だった。


そんな沖田と敵を倒しながら近藤達の下へ行く山崎は、早く片付け急いで油小路へと向かわなければと思う。



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