駆け抜けた少女ー二幕ー【完】





「永倉、少しいいか」


出て行く支度をしていた永倉を呼び出した土方。


「なんだ?」

「すまなかったな。近藤さんも悪気があったわけじゃねえ」

「…あんたが謝ることじゃねえよ。
それに、新選組に入ったことも近藤さんや土方さんと過ごしたことも後悔はねえんだ」


ただ、もう互いが進む道が違ってしまっただけ。


「そうか。なら良かったよ」


京を出たくらいからか、土方は鬼の副長の姿をあまり見せなくなった。

弱い己も受け止めたのか、それとも元々の土方歳三なのだろうか。


「矢央のことはどうする気だ?」


永倉だけを呼び出したのは、矢央のことが気がかりだったからだ。

今も永倉の無事を祈り、帰りを待っている矢央のことを永倉はどうするつもりなのかと。



「明日、会いに行ってくる。
なあ土方さん、一つ聞いていいか?」


振り返る土方に、永倉は鋭い視線を向けていた。


これがきっと最後になるだろうから確かめておきたいことがある。


















「土方さん、矢央のこと好きだろ」


土方が特定の女と一緒にいなかったのは彼なりの訳もあるだろうし、たんに好みの女がいなかったのかもしれない。

それでも引っかかるものがあった。


土方の矢央に対する態度は他の女と違うし、矢央に向ける双眸も違った。

そして何よりも、矢央といる時だけこの鬼の副長と恐れられた男が心の底から楽しんでいたように見えた。








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