駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「あまり長居すると、明里さんにご迷惑をかけそうだしね」


山南と共に頻繁に明里を訪ねていたからか、藤堂には気を許している明里。

その笑顔は、ふわり、と咲いた花のように美しい。


「山南さんって、面食いだったんですねぇ」


思わず見惚れてしまって、つい口からもれた言葉に藤堂は呆然とし、明里はクスリと息を漏らした。


山南を囲み穏やかなムードが漂う。



「矢央はん、と、言いはりましたな?」

「は、はい!」


よく見る町娘にはない色香が明里からは溢れ、女の矢央でさえ微笑みかけられるとドキリと心臓が跳ねる。


と、なれば男なら堪らないのだろう。


「こんお人は、誰よりも繊細で優しいお方やから、きっと私の知らんとこでよぉさん苦しんどるんやと思います」


少し痩せた顔に遠慮がちに触れ、邪魔になるだろうと、そっと眼鏡を外してやる。


「私は外に出ることがなかなか出来んから、どうか山南はんを頼んますえ」

「え――」

「山南はんから、よお聞いとります。 あんたはんは、自分よりも他人を労れる優しい子やと。 せやから頼んます……こんお人を、無茶せんよぉに見といたっておくれやす」



山南の頭を優しく抱え込み、矢央に切ない眼差しを向けながら頭を下げた。


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