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16.逃亡

☆16☆




「…すみません。

一度の約束でしたから…。

ベルとは、もう歌えません!」




「…え?」





社長は、何か言おうとしていた。

けれど、私は、何だか辛くなって、

走り出した。





「ま、待ってくれ!!

だ、誰か捕まえてくれ!!」






 すると、何人かの人が、

追いかけて来た。



 私は、ベルの楽屋に行って、

自分の服や鞄を引っつかみ、

近くの女トイレに入った。





「何処へ行ったんだ?」




「こっちへ行ったぞ!!」




「早く探せ!!」





 スタッフの声が、廊下で飛び交っていた。




 まさか、私が女だとは、

思ってもいないらしく、誰も来なかった。






 だから、急いで、マントや仮面などの衣裳を脱ぎ、

着替えて、廊下に飛び出した。






「待って!」





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