Voice
「お取り込み中、悪いが、

今は、そんな事どうでもいい。


それより、一つ聞きたいことがある。





 お前、あの後に、俺が居なくなった後も、

あそこに、居たのか?」







私は、曖昧に答える。








「まぁ…居たような…居なかったような…。」







 すると、梓は、急に私の肩を掴み、聞いてきた。







「なら、お前、アイツの正体を見たか?」





私は、顔を引き釣らせ言った。







「あ、アイツ?」





すると、梓は頷いて言った。







「あぁ!

あの、ベルとデュエットした奴だ!」













ゴクッ…。←息を飲む音









…まさか、『私』だなんて、

口が裂けても言えない。








「し、知らないよ。」







私がそう言うと、丁度、遠夜が、

ファンから、逃げるようにして、やって来た。









「…梓。


そろそろ、授業始まるよ。

行かないと




…ってあれ?!」








遠夜は、何故か、

私を見て固まってしまった。





梓は「ハァ?」と声を出し、

そんな遠夜を、不思議そうに見たが、

やがて、私の肩から、手を離して言った。









「…そうだな。

そろそろ、教室に行くか。」






最後に、私に向かって言った。









「…知らないのに、騒いで悪かったな。」






…ふぅ。

無事に、ごまかせて、よかった。
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