ひみつのはら

 そんなことを考えていたら、後ろで車の止まる音がした。


 2人そろってふりむいて……2人で息をのむ。


 ゆかちゃんのおうちのでも、遊理兄ちゃんのでも、さっちゃんのおうちのでもない車。


 それに乗っている、見たことのない男の人。


「……うちに、何か?」


 車の窓が開いて聞こえる、聞いたことのない低い声。


 ――まちがいない。先生たちもなかなか会えない、一番おかしい人。


「あの……小林拓人くんの、お父さんですか?」


 さっちゃんが訊く。


「……」


「あの、拓人くんに会いに来たんですけど」


「……。悪いが、ここにはいない。帰ってくれ」


 なんて冷たい大人!たっくんには悪いけど、この人イヤな人だよ。


「じゃあ、どこにいるんですか」


 こんな人と話したくないけど、この人しか知らないもんね。会えただけよかった、ってことで。


 にらんでみたら、あたしの何倍もの鋭さでにらみかえされた。……ま、まけないもん!!


「君達は緑幼稚園の子だね?じきに担任あたりから連絡が行くだろう。それまで待っていなさい」


 やっぱりあやしい!なんで自分の口から言わないの!





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