ひみつのはら

「別に、言いたい訳じゃないけど……しげるくんとおんなじなんだって思って」

 久しぶりに聞いた名前。

 え、しげるくんって、あの?

 慌ててみゆきちゃんの元へ走る。

「どうしたの?こっちゃん」

「ねぇっ、しげるくんって……」

 ここであたしは固まる。

「……え?」

 みゆきちゃんの隣にいたのは、そう呟いたしげるくんだったんだもん。

「しげるがどうかした?」

 無邪気に笑うみゆきちゃんと、仏頂面なのか無表情なのか分からないしげるくん。

 し、しまった……。

「え、えっと……今日……」

 〝しげるくんも誕生日なの?〟

 その一言が言えない。それを言う相手は、しげるくんになるから。

 でも、しげるくんとは話したこと無い。

 心臓がどくんどくんってなる。

 ……みんなには、分からないかもしれない。

 話すのが苦手―――怖いって感じること。

 〝このみなんかと話したら、相手は嫌な気分になる〟

 
< 39 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop