不器用な僕たち

◇千亜紀 side◇


   ◇千亜紀 side◇


10歳も年上の涼ちゃんが、私を本気で好きになることなんてあるのかな。

今日、学校の帰りにこっそり涼ちゃんの会社の前を通ってみた。

大学を卒業して就職した涼ちゃんと、顔を合わせる回数がずいぶんと減ってきた。

家が隣同士の幼なじみという特権と、雅人という涼ちゃんの弟をほんの少し利用して、笹峰家に行くけれど、いつもそこに涼ちゃんの姿はない。

一目でいいから、涼ちゃんに会いたくて。


でもね、やっぱり、外で働く涼ちゃんに会いに行くもんじゃないって思い知らされたんだ。


偶然、涼ちゃんが会社から出てくるところを見た。

嬉しくて涼ちゃんに駆け寄ろうと踏み出した足に、私は急ブレーキをかけた。


「笹峰くん!」


そう言って、涼ちゃんを追うように会社から出てきた女の人。

スーツ姿にヒール。

キレイにコテで巻かれたロングの髪と、お化粧。


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