不器用な僕たち

コンサート会場へのとんぼ返り。

僕の中で、ひとつだけ分かったことがあった。


どうして、リハを蹴ってまで病院に行ったのだろう。

もしも千亜紀が本当に『ただの幼馴染』なら、僕は雅人に電話して、千亜紀の容態を逐一確認するだけだっただろう。

今すぐ駆けつけたいという気持ちに変わりはないのだけれど、即実行には移さなかったに違いない。


公演が差し迫っている中、ほんの数分…数秒でもいいから、千亜紀のそばにいたかった。

そう強く願った僕が病院に行ったのは、千亜紀への気持ちが違うものへと変わっていたからなんだ。



千亜紀……。

君の強い思いは、とうとう僕の心を動かしてしまったよ。

10も年の離れた君を、好きになることなんてあり得ないと思っていたのに。

< 95 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop