不器用な僕たち
コンサート会場へのとんぼ返り。
僕の中で、ひとつだけ分かったことがあった。
どうして、リハを蹴ってまで病院に行ったのだろう。
もしも千亜紀が本当に『ただの幼馴染』なら、僕は雅人に電話して、千亜紀の容態を逐一確認するだけだっただろう。
今すぐ駆けつけたいという気持ちに変わりはないのだけれど、即実行には移さなかったに違いない。
公演が差し迫っている中、ほんの数分…数秒でもいいから、千亜紀のそばにいたかった。
そう強く願った僕が病院に行ったのは、千亜紀への気持ちが違うものへと変わっていたからなんだ。
千亜紀……。
君の強い思いは、とうとう僕の心を動かしてしまったよ。
10も年の離れた君を、好きになることなんてあり得ないと思っていたのに。