キスしかいらない
「大きくなったよなぁ・・・」
思わずつぶやく。
「ハナか?そりゃなるだろう」
日本酒を注いでくれる。

もくもくと食べていたハナちゃんは、聞こえないふりをしていた。

「天久くん、葉菜子の入学式で挨拶してたよな。あれは立派だった」
「もう、お父さんさっきからそればっかり!飲み過ぎなんじゃない?」
おじさんとおばさんが、いちゃいちゃしている。
相変わらず仲が良い夫婦だ。


「ところで、天久くん。お父様のお加減は?」
「いや・・・別に病気で退任したわけじゃないんです」
「え!そうなの?」
「もうリタイアの準備を始めるんだとかなんとか・・・わがままで」
「あらそう~。ご病気じゃないならいいわね」
「急に天久くんが理事長になるって聞いたもんだから、てっきりなぁ」

おじさんとおばさんは本当に心配してくれていたのだろう。



「急に決まったのはさ。こいつが自分からなりたいって言ったんだよ」
黙っていた陽介が、いきなりバラしはじめる。


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