春風が通りぬけるとき。
「井上さん」
優しい口調のまま、やんわりとグッと力を入れていた手のひらを開かせる。
「自分の中のその好きだという気持ちを、閉じ込めては駄目」
「え…」
ならば一体どうすればいいのか。
閉じ込めなければ、萌も田原もこの恋心のせいで傷ついてしまう。
親友でなくなってしまう。
それだけではなく、話し掛けてくれないかもしれない。
(…もう、笑ってくれないかもしれない)
ふたりの最後にみせてくれる顔が哀しい表情だなんて。
そんなのは嫌だ。