たる



 青白い顔の女の指を探すべく、僕たちはあらゆる引き出しを物色した。
 しかし、指は一向に見つかることはなく、次第に睡魔に襲われはじめる。

「ねえ、石橋」

「何?」

 神妙な口調で、藍原馬鹿野郎独裁者研究員が言った。

「おかしいと思わない?廃屋にも関わらず、こんなに家具があるなんて。まるで、人が住んでるみたいに」

 確かに。言われてみれば。
 部屋の中には、タンス、テーブル、本棚、ストーブまであった。電気通ってないから、点かないが。
 もしかしたら、ここって……

「誰かの秘密基地、だったり?」

「はあ?」

 また"意味が分からない"と代弁するかのような声を、出された。

「だって、埃も全くないし」

 そう言って僕はタンスの上を、指でなぞった。
 手には、綺麗なほど埃がつかない。

「……怖い」

 ボソッと藍原馬鹿野郎独裁者研究員は呟いた。
 何か、本心を聞いたような気がする。
 女の子だもん。そりゃ怖いわな。僕も怖い。

「最初入ったときから、おかしいと思ったの」

 何かに取りつかれたように、藍原馬鹿野郎独裁者研究員は、喋りはじめた。それも普段見せる、堂々とした口調ではなく、震えている口調で。

「ここ、廃屋の割には綺麗すぎるわ。廃屋なら蜘蛛の巣はってるはずだし…。ツルだって部屋に侵入してないのがおかしい。何より埃がないのも。まるで誰かが住んでるみたい」

 その瞬間、ドンっと何かが倒れる音が聞こえた。

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