女王様と王子様
『ただい「いらっしゃーい!!」


ま、という前に実咲が走って出てきた。


「お帰り、透子ちゃん。…藤臣君もいらっしゃい」

「こんにちは」

『ごちゃごちゃしてるけど、上がって』

「透子ちゃんひどい!お母さんちゃんと片付けたのに…」

『これは片付けたって言わない。“寄せた”って言うの』


階段の隅に実咲のオモチャが転がったりハンカチが落ちてたり…
お母さんは洗濯や料理は出来るがその他はオンチだ。


『ここ入って』

「お邪魔します」


とりあえず藤臣を居間に案内する(ここが一番綺麗だ)。
襖を閉めようとすると、実咲も入ってきた。


「山本みさきです!六才です!すきな食べ物はイチゴです!」


何その敬礼。どこで習ったのよ。


「藤臣棗です。よろしくね、実咲ちゃん」


得意の笑顔で自己紹介する藤臣。
その態度に機嫌を良くした実咲はゴキゲンに藤臣の隣に座った。


「みさき、ふじおみのこと知ってるよ」

「え?」

「とうこちゃんがいつも“何の苦労もしてないくせに!ムカつく!”ってゆ『ちょ、ちょっと実咲!』

「ふがっ」


慌てて実咲の口を閉じたが遅かった。


「山本さんがそんなことを…」

『な、何よ。間違っちゃいないでしょ』

「どうかな」


…その意味深な発言はなんだ。
< 29 / 47 >

この作品をシェア

pagetop