【短】ひこーき雲
「うん!!またね!!」
彼女は笑って教室に入って行った。

俺は携帯のメモリに入った『仲口綾』のデータを見ながら教室へ向かう。


「あっ、大地〜先に食ってるぞ…って、お前顔キモい。」


「は?何でだよ。」
俺は携帯をたたんでズボンにつっこんだ。


「にやにやしてる。良いことでもあったのか?」

俺は口を押さえてから「別に…」と言った。
その日の午後の授業は、ほとんど空を見ていた。

飛行機雲が出ていたら、彼女に教えてあげようと思ったから。


でも、現れることは無かった。
< 10 / 29 >

この作品をシェア

pagetop