最果ての月に吠える
まだ眠りの深い底に囚われているような彼は吐息を繰り返していた。





「先輩? 私は先輩に何をしてあげたらいい?」





私が問い掛けるとゆっくりと瞼を開き、





「―――世界の果てを見てみたい」





と彼が言った。





信号が、青に変わる。





「わかった。―――見に行こう」





私はそう言って、アクセルを強く踏み込んだ。





彼の願いを叶えるために。





危険な散歩へ私は彼を連れ出した。





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