新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]

 その日は、あっと言う間に日が傾いた気がする。


───今日の仕事はここまでにするか───


 根城に待ち人が居ると思うだけで、こんなにも頑張れるとは思わなかった。


フウカの笑顔を思い浮かべると、胸の奥がじんわり温かくなる。


───あ、グズグズしてたら殺られちまう───


 ポケットから取り出した予備の犬笛を、敬虔なクリスチャンのように胸に懐いて、俺は歩を早めた。


 夕闇迫るこの時間、地下へ降りる階段周辺は最も危険を孕んでいる。


テントの有るフロアーは、丁度その布が電気のカサの役割をしていて、目で見える範囲全てを明るく照らし出している。影が現れたらすぐに視認出来るための配慮だ。


しかしこの階段部分は至る所に物陰が有る。影が潜むには絶好の場所だ。


俺は慎重に歩を進めた。



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