4 X’mas story
書きなぐられたような雑な文字。

見たことない父の文字。

「もう何年も前になるわ。
私たちの前に、クリスと名乗る男が現れました。
彼は目玉が飛び出るほどの大金をもって、この貧しい国を救いたいと、そう声高々に叫んでくださいました。
その大金のおかげで、たった数年で、私は今や医療先進国とまで呼ばれる国の、一番大きな施設の院長です。
でも、なぜこの国が発展、振興するのに、医療を選んだかというのは、その手紙にあるのです。
その男性は言いました。
いまこうしてここに大金を運んでこられるのは、命懸けで妻を救おうとしたノエルという男のおかげだと。
だから、せめてもの贈り物として、彼の妻と同じように苦しむ人を少しでも救うために、この金を使いたいと。
そうして、いま、彼の息子が、恋人の病を治すために、私のもとに訪れてきた。
涙が止まらないわ。
この薬、みんなには内緒よ、あなたの父に免じて、お金はいらない。
早く港へ行って、一番の船と乗組員をチャーターしなさい。
そして早く恋人のもとへこれを届けてください。
それが私のするべきことです」



顔も知らぬ父。



ねぇ、父さん。

父さんはマリカの命を救ったよ。

最愛の人を救ったよ。



長いこと待ったけど、ちゃんと届いたよ。
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