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こっちはマフラーもして、それでもまだ足りないほど寒いのに、メグルからはまったく寒さというものが見えない。

特に暑がりだというわけでもなくて、夏もそれなりに平気そうなヤツなのだ。


お前の体感温度、絶対狂ってるよ。かなりね。


マフラーを鼻先まで引き上げる。
隙間から漏れた吐息は、4度の空気に白くなり、灰色の空へと昇って行った。



「ユヅル」


横断歩道の赤信号で立ち止まり、それと同時に名前を呼ばれる。

視線を右へ、そして下に少し下げると、メグルの横顔が確認できた。鼻先が少し赤い。


「なに」
「画材屋さんとケーキ屋さん」
「どっち先行こうかって?」
「うん」
「絵の具どんくらい買うの」
「わかんね」
「なにそれ」
「たぶんそんな買わない」
「じゃあ画材屋先で」
「んー」


間延びした返事が俺の耳に届いたところで、信号の色が青に変わる。




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