オオカミ少年
とうとう向かえたテスト当日。

「舞、勉強した??」いつもよりワントーン低い葵の声。
葵がテンション低いなんて珍しい。

「…してない」
って言うか、私、本当に全然テスト勉強してないんです。


テスト開始10分でどの教科も終わった…、と確信した。
もう赤点確実。
だってほとんど白紙なんだもん。

「舞、どうだった?って顔怖い!!」
私は驚く葵を見る。
「…もう全然駄目。全部赤点だよ…」
と言う私に葵は何も言えないでいる。
…葵は出来たのか。

今日は町に待った、いや全然待ってないけど。
テスト返却日。

数学…3点。
国語…6点。
理科…4点。
社会…3点。
英語…5点。
やっぱり全部、赤点だった…。
っていか全部、一桁…。
制服目当てでなんて高校を選ぶんじゃなかったと今更後悔した。

「おーい、仲谷。ちょっと来い」
…テストのことか。覚悟はしていたけど足は重くなる。


「補習…?」
思わぬ言葉に聞き返せば、
「ああ」
の声。

補習…。
嫌だよ…。

「学年一位の奴が最下位の奴に勉強を教えるのがウチの学校の伝統だ」
学年一位の人…。
誰だろ。
何て考えていると、「今日から補習始めるから。学習室行けよ」
の指示。

…今日から!?
葵にメールしなくちゃ。
私は葵に帰れないとメールを送り学習室へ向かった。

…この補習が私の高校生活を大きく変えるなんてことも知らずに。
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