オオカミ少年
「あ~、そのグロスの色、可愛い~ね~」
私の前の席の子が可愛い声で言った。
何かと思い前を見れば、睫毛は全部、上を向いていてアイラインはムラが無い。その大きな瞳で私は見つめられている。
え、ああ。私?
「そ、そう?ありがと~」
「仲…谷さんかあ!!私、徳永葵っ!!葵って呼んで~♪」
葵と言う子は可愛く笑いそう言った。

…可愛い~!!
え!?今、私、高校生活、楽しんでる!?
沈んだ気持ちは何処かに行き、心が再び弾みだした。
「私、舞!!舞って呼んでっ」
「うん♪あ、担任来たっ」
葵は、そう言い前を向いた。

「はーい!!座る、座る!!」
担任は…、ま、いっか…。
私達のクラスの担任は見るからに熱血教師って感じだ…。
短い髪は見事に、立ち上がっていて、肌が黒い。
一切、整えていないであろう太い眉毛。太い首、赤いジャージ。
なんだか、昔の体育教師みたいだ。

「はい、初めまして!!皆さんの担任になりました。村内悟です!!一年間ヨロシクなー」
これは、もう熱血決定だ。

「えー、入学したてで申し訳ないんだが」
と言っている割には村内先生の顔は満面の笑みだ。
全然、申し訳なさそうに見えないし…。
「この学校は5月に体育祭がありまーす!!」
それを聞いた生徒は『えー』や『ヤッター』など色々な声を発した。

…体育祭か。
体育は割と好きなほうだし…。

「静かに!!とにかくそう言う決まりなんだ!!競技とかは明日決めるんで、解散してください!!」
と勝手に教室を飛び出し村内先生に皆、ブーイング。

ま、早く帰れるし。と思い私は鞄を肩にかけた。
「舞~♪舞の家ってどこら辺?」
と相変わらず可愛い声で葵に聞かれた。「駅の近くだよー」「えっ!?私の家と近い♪じゃあ、一緒に帰ろ!!」
「うんっ」
私と葵は昇降口に向かった。

やっぱり高校っていいよな~♪
もう、朝の男、…えっと…、竹内…廉だったけ?
もう、あんな最低な男でも今では許せるよっ!!
と私が思っていると柔らかいものにぶつかった。

痛い…。
額を押さえながら上を見上げた。
「す、すいませ…」
その瞬間、私は言葉を失った。
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