『アイシテル』を忘れない。
「悠ちゃん!」
「あ、沙雪…。」
「さっき来てくれてたんだってね?ごめんね!」
「いや、那智といたんだろ?」
「…まぁ、ね?」
今のクラスは、僕と沙雪が一緒で、
夏音と那智が一緒だ。
ちなみに、どちらも席は細工して隣同士になってある。
…那智には悪いけど、僕はこの状態が、遠すぎず、近すぎる距離でもなく、
沙雪と仲良く話せるチャンスだと思っている。
「悠ちゃん?」
「あ、あぁ…また俺、ボーっとしてた。」
「もうー…あんまり無理しちゃだめなんだよ?」
「おう、分かってるって!」
「ほんとにー?」
「…最近は、大丈夫なのか?」
僕は、なんて残酷な男なんだろう。
沙雪の笑顔を、奪ってしまう言葉をまたひとつ吐いた。
「…やっぱり、悠ちゃんには分かっちゃうのかな?」
…苦しいんだ、やっぱり。
そう言って、ため息をつきながら沙雪は髪を耳にかけた。
僕は、その仕草が那智のためだけに存在しているのを知っている。
僕なら、沙雪にそんな仕草させないのに。