たったひとりの王子様 [完]



「…明美?」



由宇は、あたしの姿に気付いて、ドアのところまで走ってきた。



「…ふぇ…っ…」



その姿を見たら…やっと止まった涙が、またあふれた。


心配と驚きでいっぱいの由宇の顔。




由宇はあたしの手をひいて、体育館ウラにいった。



本日二度目の体育館ウラ。



「…どうした? 大丈夫か、明美?

金井に喋ってから…あいつ、どっか行ったけど…。明美になんか言ったのか?」



由宇の優しい問いかけ。


あたしは小さく首を振る。




< 186 / 268 >

この作品をシェア

pagetop