たったひとりの王子様 [完]
「…明美?」
由宇は、あたしの姿に気付いて、ドアのところまで走ってきた。
「…ふぇ…っ…」
その姿を見たら…やっと止まった涙が、またあふれた。
心配と驚きでいっぱいの由宇の顔。
由宇はあたしの手をひいて、体育館ウラにいった。
本日二度目の体育館ウラ。
「…どうした? 大丈夫か、明美?
金井に喋ってから…あいつ、どっか行ったけど…。明美になんか言ったのか?」
由宇の優しい問いかけ。
あたしは小さく首を振る。