ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
コウさんはいつも、自分の車をブルーウィンドに積み込んでいた。


神戸や東京では、停泊時間が短すぎて車を降ろす暇もないけれど、北海道ではよく車に乗って出かけていたらしい。


どこへ行くのかは、誰も知らなかった。


海の男は、あちこちの港にそれぞれの女が待っている、などと言われることが多い。


もしかしたら、パーサーもそうかも、なんて噂されていたらしい。



朝、十勝で下船されるお客様を見送って、勤務解除となった。


8時ちょっと前に、事務室へ行き、パーサーに一時下船の挨拶をする。



「気を付けて歩きなさい」



そう、声をかけられた。



「はい」


心の中で付け加える。


悪い男の誘いにはのらないですよ、と。



フェリーターミナルで地元スタッフに挨拶をしつつ、外へ出る。


5月の北海道は、まだ肌寒い。


背筋を伸ばしてまっすぐな道を歩き出すと、満開の桜が見えた。

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